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夢の食卓     雲の上のパン屋さん 

                  Table of Dreams ~夢の食卓~

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 標高2,300m、志賀高原の横手山頂。ここに手作りのパンが買える「雲の上のパン屋さん」がある。

 パン屋さんと宿「横手山頂ヒュッテ」を切り盛りするのは高相さん一家。宿の主である重信さんと妙子さん夫婦、息子夫婦、忙しい時は重信さんの母よしのさんも加わり、親子三代で営業している。
 国立公園に指定されている志賀高原は原生林があり、湿地帯の多い大小70余の湖沼、高山植物、温泉などに恵まれる。
 スキー場としても有名だが、7月に入ると夏山を楽しむためトレッキングをする人々でにぎわう。横手山頂ヒュッテには、パンを買い求めるお客さんが多くつめかけ、山頂からの景色を楽しむ。

 初めパンを焼き始めたのは、50年ほど前に神戸から嫁いだ妙子さん。山頂ではパンを焼く温度調整が難しく、生地の発酵も難しい。当時はお風呂場で生地を発酵させたりと、試行錯誤した。そんな苦労の末、出来上がったパン。今ではこのパンのために日帰りで来る人もいる程人気で、多い日はお客さんが1000人にもなるという。
 そんなお客さんたちに、重信さんや妙子さんは気軽に話しかけ、コミュニケーションを取る。美味しいパンと、美しい山頂からの景色、そして気軽に接してくれる高相さん、そんな心地良い空間に惹かれ、常連になるお客さんも多い。

 戦後間もない頃、この場所で山小屋をはじめたのは父・耕作さん。重信さんは中学卒業後、すぐに父を手伝い働き始めた。厳しい山の環境の中で出会う人々を自分の家族のようにもてなし、一緒に食卓を囲んだ。そんな時代からの常連さんとの食卓会が、毎年開山祭の時期に行われる。中には50年以上も交流のある人もおり、本当の家族のような関係。50年前から変わらない山の上での特別な食卓会、そこでは他人であろうと関係なく、親密な時の流れる空間だった。







by mahalotakashi | 2012-08-22 21:21 | mahalo@食卓