意地の節分(太巻き寿司の恐怖)      2007年2月3日

恐怖の太巻き責め

d0083265_10534595.jpgアメリカン・マフィアの中に「死の接吻」という、恐ろしい掟がある。
ギャングの親分が、気に入らない人間を抹殺する時、子分に「殺せ!」などとは言わない。
殺す相手に対して、親分がキスをするのである(額か頬)
マフィアの秘密会議場などでこれをされると、その男は数日以内に必ず死ぬ。(殺される)
どこへ逃げても無駄だ。


そして、我が家にも身の毛のよだつような掟がある・・・
「死の接吻」ならぬ「意地の節分」。毎年2月3日の節分が近づくと、家族はみんな憂鬱になる、一人を除いて・・それは我が家の奥方、彼女が仕掛け人だ。

 どこに暮らしているときも、節分の豆まきと、太巻き寿司を恵方(縁起の良い方角)に向ってかぶりつくという、いいかげんウンザリするイベントを欠かしたことがない。
その夜は、太巻き寿司が各自に1本と、焼いた鰯(いわし)にお豆腐の入った御吸い物だけしか出ない。

 育ち盛りだった長男など、中高生の時分は泣いて抗議していたものだ。

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 なぜ彼女が執拗にこだわるのか? 私なりに考えられる理由として、一つの出来事がきっかけだったと思う。

 今から二十数年前、私が当時関西地区で流行りかけていた、「節分の夜に恵方に向って、太巻き寿司を黙って食べきる」という風習を聞いて、お土産に一家四人分の巻寿司を買って帰り、家族に説明したところ、息子も娘も大変面白がって、早速食べよう・・ということになった。そのとき奥方は、「下品な風習ね・・」と少し軽蔑した眼差しで私を見ていた。

 「巻寿司を1本食べきるまで、絶対喋ったり笑ったりしたらダメだよ」といって私が手本を示して、確か南南東の方向だったと思うが、そちらを向いて口の中に押し込んだ。
続いて息子と娘が・・最後に奥方が、口一杯に巻き寿司をくわえた。

 人間、笑うな!といわれると逆に笑ってしまうケースが多々ある、テレビも消してシーン・・と静まり返った部屋の中で、四人が正座して全く同じ方向を向いて、巻寿司を丸ッポ口に咥えている場面を想像してもらいたい。異常な光景だ。

 そのうち、こらえきれなくなった息子だったか、娘だったかが、プーッ!!と吹き出し、天井に向って、寿司ご飯を噴水のように撒き散らした。
それをきっかけに家族全員が、口の中の飯粒を噴出して笑い転げる状況に陥ったのである。「いひひひひ・・ハハハハハ・・ブハハハハ!!ヒーッ!ゲエーッ!」
奥方などは、笑いが止まらず『く・く・苦しい・・救急車呼んでえ!』と叫びだす始末だった。

 家族全員が大口開けて、大笑いして転げまわるなんて状況は、普段は殆んど有りえない、笑い茸の中毒にでもなったのならいざ知らず、どこの家庭でもそんなにはないだろう。

 結局、それがキッカケとなり、我が家に節分の奇習が根付いてしまったのである。それ以来延々と続行されている。
「おかあさん、これは関西の寿司組合の陰謀で、昔からある風習じゃないんだよ」と何回も中止を勧告したが、よほどあの夜の雰囲気が気にいったのか、奥方は毎年太巻きを用意する。
ここ数年、息子がいなくなった3人家族、節分の夜太巻き寿司を食べる前から笑っているのは奥方だけである。

 今年こそは・・逃げてやろうと、わざわざ新年会を2月3日の夜にセットしたのだが、それも無駄な抵抗だった。
『ハイッ!太巻き寿司と焼イワシ、どうぞお食べになって・・うふふふふ・・』
「今夜はまだ節分じゃない!」というと『節分前夜祭!だって明日は宴会でしょ』とぬかす。

 なんとか豆まきだけは勘弁してもらって、今年の恵方(北北西)に向って、夫婦二人で太巻き寿司にかぶりついた。
娘は遅くなるらしく、二人で食べたがおかしくも何とも無い、おまけに今年の太巻き、やたらに干瓢(かんぴょう)が多く、巻寿司の中からニュルニュル・・と口について抜け出てくる。

 奥方も、口に2本干瓢をぶら下げて、『三宮の老舗の寿司屋で買ってきたのに、ダメねこれじゃ』『お父さん・・来年はこれやめて・・・』

 「オーッ!遂にあきらめてくれたか♪・・よかったよかった」

 『娘も嫁ぐことだしねえ・・・』

 「そうそう、やめようやめよう・・」

  
 『来年は、太巻きやめて、上巻寿司にするわ!年寄り二人だもんね・・』


                    意地の節分はいつまでつづくのでしょうか・・・・

by mahalotakashi | 2007-02-03 15:10 | mahalo@食卓