夢の食卓      中津箒が伝える暮らし

                  Table of Dreams ~夢の食卓~

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 神奈川県丹沢の麓、愛川町中津は、明治の初期からほうきの産地として知られてきた。今では希少な国内産のホウキモロコシを材料に職人が一本一本丁寧に作る。その穂先は柔らかく、部屋の片隅や窓枠など掃除機が苦手とする場所も難なく掃除できる。また、実用的であるばかりでなく、茎の部分を格子状に編み込んだ意匠はまるで美術工芸品のように美しい。

 「中津箒(なかつぼうき)」として知られるこのほうき。実は掃除機の普及とともにほうきの需要が減り、昭和40年代に生産が途絶えてしまう。以来“幻のほうき”とされてきた。しかし2003年のある日、ほうき屋の6代目にあたる柳川直子さんが偶然目にしたほうき職人の技に改めて感激し、この伝統を絶やしてはいけないと再興を決意。彼女の元に、52年ぶりに復帰したベテラン職人や、新たに職人になりたいという若者たちが集まり、2007年、「中津箒」は復活を遂げたのだ。

 日頃、職人たちは個人作業。だからこそ直子さんは、季節の変わり目や仕事の節目に皆でひとつの食卓を囲む時間を大切にしている。工房で、その技を伝えることが出来ても、他に伝えきれないこともあるからだ。

 「自然のありがたみの一部分を貸してもらってほうきを作っている」と直子さんは語る。古来、自然の中からモノを作り出し、自然とともに暮らしてきた日本人。たったひとつの生活道具からでも、日々の暮らしはこんなに豊かなものになる。そう気づかされる食卓があった。







by mahalotakashi | 2012-10-24 23:59 | mahalo@食卓